私が知らない私

9/18
前へ
/109ページ
次へ
陽菜は見知らぬ場所で大地と離れるのは心細かった。 「ちょっと…大地!!」 小声で大地を呼んだが、サッカーバカの耳には何も届いていなかった。 「ハル、ちょっと待ってて!!」 大地は笑顔で女性の後ろをついていった。 まるで金魚のフンだ… 陽菜は薄情な大地をそんな風に思った。 藤堂と二人になった陽菜は適当な話で、気まずい空気を逃げ切るしかなかった。 「あっ、大地が調子にのっちゃってごめんなさい…」 藤堂は首を横に振って笑っていた。 陽菜の目の前に座り、陽菜にケーキをすすめた。 陽菜は何種類もある中から一つを選び自分の前に引き寄せた。 藤堂に見られてるせいか、一つひとつの動作が慎重になった。 静まりかえった室内で、藤堂の目だけが監視カメラの様に陽菜を捉えていた。 「今日は驚かせて悪かったね。」  
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

297人が本棚に入れています
本棚に追加