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「一年も前の話ですよ。」
陽菜は照れながら下を向いてケーキを口に入れた。
藤堂はずっと何も言わず黙っていた。
さっきまでの鋭い視線が陽菜から逸れ、ある一点を見つめていた。
「僕も君に好かれたかった。」
小さな声で藤堂は言った。
陽菜が顔を上げて彼を見ると、鋭い視線はまた陽菜に注がれていた。
「今日君に出会えたことは運命だと思うよ。
この気持ち…また味わえるとは考えもしなかった。」
陽菜には何を言っているのか理解できなかった。
「今度こそ君を渡さない
…誰にも。」
藤堂の力強い言葉に圧倒された。
私のことを誰かと間違えていると陽菜は感じ取ったが、訂正する隙もなかった。
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