プロローグ

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   サンタクロースが嫌いだった。  正確にはクリスマス、もっと言えば12月の25日が嫌いだったのだ。  何故かって――生まれてこのかた、記憶に残るクリスマスは必ずと言っていいほど不幸に塗れていたからだ。  理由はわからない。  だが確実に、大小はあれど毎年不幸に巻き込まれるのだ。  周りが宗教色も出さずに浮かれる中を、一人暗い顔で過ごす一日をもう何年越して来たことか。  けれど、それを周囲の人間や環境のせいにするのは少々身勝手な気がするし、しかし気のせいにするには偶然が重なり過ぎだ。  だから、とりあえず架空の存在あたりのせいにしてやることで、何とか精神の平常を保っているわけである。  それは別に、千年前に先祖が退治した悪霊の積年の呪いでもよかったし、大銀河を統べる恐怖の大王の思し召しでもなんでもよかったが、やはりクリスマスに最も相応しいのはサンタクロースだと思った。  だって、そうだろう?  サンタクロースはクリスマスにプレゼントを運ぶというのに、さして素行も悪くないいたいけな少年に、毎年不幸を置いてくとは、すわ何事か。  つまり、奴は恐らく一人分のプレゼントをどこかで取り落としてしまい、よってそのいたいけな少年はプレゼントをもらい損ね続けたわけである。  そして何のお詫びか、不幸だけリボンをかけて枕元に置いていくわけだ。  ふざけんな、と。  そんなわけでサンタクロースが嫌いだった。  そして今年も――ああ、くそ馬鹿やろう。  一日早い慌てんぼうのサンタクロースはとんでもないものを落としていきやがったのである。  今年もまた、サンタクロースを嫌いになりそうだった。  
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