第一章

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   ファーストフード店を出て幸一は再びアーケード街に繰り出した。  傍らでは中井が逃がさんとばかりに幸一の腕を掴んでいる。  先程はサンタの気配を感じたなどと言って駆け出していった中井だが、どうやら見失ったらしい。 「良いですか、真面目に探さないで不幸になるのは貴方なんですよ?」  幸一の眼前に人差し指を向けながら、諭すように中井は言う。  そうは言っても、その“不幸”自体、サンタクロース側の不手際なのだから、その尻拭いを幸一自身がするというのも理不尽な話である。 「ちょっと休憩してただけだよ。だいたいさぁ、こんな――こ、こんな脳内写真一つで……」 「何、顔を赤くしてるんですか……不埒な」 「お前に言われたくないし! お前のせいだし! お前の持ち物だし!」 「この写真がどうかしたんですか?」 「ばっ! 街中で出すなっ、隠せ、ほら隠せ!」 「え、うあ、ちょっ」  所持しているだけで通報されそうな写真を中井の手から奪い、強引に服の中に押し込める。 「ったく、そんな犯罪写真でサンタクロースが見つかるわけないだろう」 「いえいえ。ですからぁ、先程も言ったように、下着のバックプリントの鹿が重要なんですよ」 「は? そういやそんなこと言ってたな」 「言いつつ顔を赤らめるんですね、もう」 「言うなっ、お前の七つ道具のせいだ! で、それが何だって?」 「察しが悪いですねぇ。それが手掛かりですよ」 「……は?」  中井は出来の悪い子を見るような哀れみの目で幸一を見据える。  意味がわからないのではない、理解出来ないのだ。中井の言っていることのどこに手掛かりがあるのか。いや、したくないだけかもしれない。  まさかとは思いつつ、幸一は訊ねる。 「その辺の女性に所持してる下着を片っ端から見せてもらうつもりじゃないよな……?」 「この変態さんめっ!」 「んな!? いや理不尽だけどハズレで良かった!」 「懇切丁寧にお尋ねしますよ!」 「って、やっぱりか! この変態さんめっ!」  さもありなん。  こんな奴が聖夜に飛び交い、無垢なる子供たちにプレゼントを与えているなんて、世も末だ。  
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