第一章

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   人通り多いアーケード街で中井と前衛漫才をしていても、サンタクロースが向こうからやってくるわけでもない。  ましてや大声で下着の話などしていたら、来てもらっては困る人達がやってくるかもしれない。  幸一はため息を我慢して、話題の方向修正を試みる。 「お前が感じた気配ってやつはどうしたんだ? 見つからなかったのか?」 「え? ああ、それが不思議なことにさっきから近くにいるのに見つからないんですよ。そればかりか、むしろ一定の距離を保っているみたいな」 「バグってんじゃねえの?」 「そんな筈ないですけどね、試しに……」  中井は再びダッフルコートの中に手を突っ込み、何かを取り出す。  また得体の知れぬものが出てくるのではないかと危ぶむ幸一の心配をよそに、妙な効果音を口で発しながら、中井はそれを取り出した。  手の平サイズの直方体、理科の授業で使った電圧計か、ギターなどにつかうチューナーに似ている。  目盛りのようなものがあって、それが揺れ動いていた。 「これは?」 「七つ道具の一つです」  事もなげに中井がのたまう。  前例から鑑みるに、酷く胡散臭い道具だ。 「それはどんな卑猥な道具なんだ?」 「失礼な。私の道具に卑猥なものなどありません。これは『サンタサマミツカール君二号』です」 「どこからつっこめばいいんだよ」 「これはですね、サンタ様の気配を読み取って数値化する機械なのです。本来は、次期サンタ候補を見つける為の道具なんですけどね」  そう言って、試しにと、サンタクロースのコスプレをしたケーキ屋の娘にそのアンテナ部分を向ける。 「サンタ値たったの5か、ゴミめ」 「お前とお前のご主人よりよっぽど仕事熱心な彼女に土下座して謝ってこい」 「こんな感じでサンタ値がわかるんですけど」 「どんな感じだよ」 「どうもある一定の方角と距離設定にすると数値がカンストするんですよねぇ」 「カンスト言うな。それを使ってサンタの居場所はわからないのか?」 「概算でなら。ただ、先程もいったように、一定の距離を保っているようなんですよ」  どうやら幸一達、というか中井の動きはサンタクロースに把握されているらしい。  何故姿を隠しているのかはわからないが、敢えてそうしているのなら捕まえるのは厄介そうだ。  
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