第一章

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   場所がわかっているのだから辿り着くのは早いもので、はぐれたという地点までは30分もかからずに連れていくことが出来た。  しかし、何となく予想出来たことだが、そこに姉の姿はなかった。 (つーか、これって結構ヤバイ状況じゃないか? この人混みで迷子って……)  傍らの少女ゆみは辺りを見回しながら、不安げに瞳を揺らしている。 「あー、そうだ。ケータイとかは?」  幸一が問うと、ゆみは首を横に振る。 「えーと、お姉ちゃんも?」  今度は縦に振った。  幸一は一応、最寄の交番を検索しておこうと携帯電話を取り出そうとしたが、携帯電話は中井に壊されたため持っていないことを思い出す。  睨みつけてやっても、中井は小首を傾げるばかりだ。  しかし、ふと中井の顔を見てあることを思い付く。 「おい、お前のいかがわしい道具で何とか出来ないか? 一つくらいまともなのあるんだろ?」 「果てしなく無礼な物言いですね。全部まともですが、ただの人捜しというのは難しいです。相手がサンタクロースなら話は別ですが」 「なあ、ゆみちゃ――」  言いかけて、幸一は言葉を飲み込む。  ゆみは顔をあげて首を傾げるが、幸一は「なんでもない」と言って誤魔化した。  まさか「お姉ちゃんはサンタクロースか?」なんて訊けるはずもないし、仮に訊けたとして頷く筈もない。 「じゃあ、オイ、例えばプレゼントの前借りとか出来ないか? どうせクリスマスもイブ同じようなものだろ」  幸一の不幸も一日早く訪れて今に至るのだから、それくらいのサービスはあってもいいだろう。 「前借り、ですか」 「ああ、いや。トナカイに言っても仕方ないか」 「むっ、そんなことありませんよ。今までだって、プレゼントの管理はこの私がやってきたのですから」  そう言って自慢げに頭を突き出す。 「撫でないからな?」 「角を張っただけですよ」 「いや、そこは胸を張れよ……で、結局可能なのか?」 「不可能ではありませんよ」 「よし。ゆみちゃん、この怪しいお姉ちゃんが何とかするってさ」  それを両手離しで信じるはずもなく、ゆみは不審そうに中井を見上げた。 「さあ、中井。思う存分奇跡を発揮してやれ」 「その前にですね、サンタクロースのプレゼントは“良い子”にしかあげられないのです」 「はあ? 何を――」  幸一の言葉も聞かずに、中井は一歩踏み出して、ゆみの前に立つ。  
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