第二章

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   短い沈黙が訪れる。  先に口を開いたのは幸一だった。その続きを、昏い瞳の小夜子に促す。 「それで、どうなったんだ」 「どうにも。プレゼントを渡す筈だった子は、最初から不幸だったのよ。罪を犯さければならないほどにね。私が渡す予定だった“モノ――不幸”は、遅かれ早かれその子が得るべき運命だった。それだけのこと」  因果応報――運命が理不尽にあってなお、その法則が乱れることはなかったのだ。  その子にとっての幸いは、この世界になかったのだろうか。  それはとても悲しいことだ。しかし、それが現実でもある。理不尽で、不公平で、不条理な世界なのだ、ここは。 「なかなか結論にたどりつかないな。その責任を感じてサンタクロースをやめたのか?」  小夜子はここでも首を横に振る。 「救えないのはわかってた。それでも私はプレゼントを取り落とした。そして、それを受け取ってしまった子がいた」  幸一は口を挟まず続きを促す。 「それは、それを受け取ってしまった子の本来のプレゼントで置換すればなんら問題はなかった」  けれど小夜子はしなかった。  その前にサンタクロースをやめたのだ。  何故か。その答えのすぐ近くまで来ている筈だ。 「何故しなかった。何故、サンタクロースをやめた」 「それは――」  小夜子は顔を上げる。  瞳は遠くを見つめていた。ここではない、どこか遠くの何か。  そして穏やかな口調でその先を語る。 「その子が“不幸”ではなかったから」 「えっ?」  幸一は虚をつかれたように目を丸くする。 「どういうことだ?」 「つまり、その年のその子の願い――それは『誰かの不幸を背負うこと』だったの」 「え?」 「その子はとても幸せな家庭に生まれて、まっすぐに育った。けどある時、不幸を知った。自分以外の人間の不幸を。彼女は自分が幸せであることを知っていたし、それを尊いものだとも知っていたけれど、そこからでは見えないものがあると知ったの 「彼女――?」 「不幸というより、不運かしら。彼女にとっては同じだったようだけれど」  ここにきて幸一は混乱しはじめていた。  小夜子の口から紡がれる言葉が自分の予想と食い違っている。それは、まるで―― 「俺、じゃないのか?」 「あなたよ、あなた。不運な人間はあなた。けれども、それは、私のプレゼント――不幸によるものではない」  
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