rain

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とは言っても、2年前から気になっていた訳では無い。 相手のいるヤツに絡む趣味はないため、指輪をしている男など私の中では論外だ。 そして、指輪をしている時点で顔にも興味が無いため、単に指の綺麗な男でしか無かった。 あの時までは... 1年前くらいの雨の日だった。 店を訪れた彼は、傘もささずにいたのか、髪の毛から水が滴ったまま軒下に佇んでいた。 その姿が、元気の無い大型犬のように見えて、動物好きの私には放っておけなかった。 そう、彼を救おうとしたのではなく、単に昔飼っていたシベリアンハスキーのジョンに似ていたから...。 まぁ、そのジョンの指に指輪が無いことに気づいてから何となく興味を持ったのだが... よく見れば、ジョンの顔は整っており、食べ方も綺麗で、私のお気に入りの客となっていた。 とはいえ、あくまで観賞用として見ているだけで良かったのだが... 「マスター仕事は何時頃終わりますか?」 思い返していると、会計を済ませて出ていくはずの彼が振り向いて尋ねてきた。 「...仕事の終わりですか?...そうですね、夜の営業がありますから夜中の1時頃でしょうか」 へぇ...彼が話しかけてくるなんて珍しいな。 「夜?」 彼が不思議そうに尋ねる。 なるほど知らなかったわけか... 「えぇ、夜はbarをしていますから。ソフトドリンクもありますし、飲まれなくても宜しければお越しください」 答えながら、いつものようにスマイルをのせる。 さぁ、どうする...? 「そうですか...」 彼は少し考えるような仕草をしてから、ぺこりと頭を下げて店を出ていった。 それにしても、何故、私の仕事終わりを気にしたのだろう?
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