141人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
コーヒーの豆をひきながら、考える。
彼のために、これで止めるべきなのか...経験として積ませても良いのか...
まぁ、1度決めたことで悩むなど、私らしくもないのだが。
カラン...
確か、表にはクローズの看板を出してあったはずだが…
「...来てしまいました」
「おはようございます」
ドアの所には彼が立っていた。
何かあったのだろうか?
「開店前にすみません...その、逢いたくなってしまって...」
困ったように少し顔をそらす彼に、胸がなった。
ストレートな言葉が響いた。
「...そうですか、珈琲でも入れましょうか?」
彼を見て、また、胸がなった。
「...はい、頂きます」
珈琲の香りがする中、彼は、カウンターに座る。
珈琲を入れて彼に、渡すと幸せそうな顔をした。
「...好きでいてもいいですか?」
不意に彼に問われる。
「面白い事を言いますね...まるで、どこかにでも行ってしまうみたいだ」
その言葉に彼の瞳が揺れた。
図星か…。
「...寂しいですね。でも、来られる時になったらまた来てください」
出来るだけ、しんみりしないように彼に伝える。
「聞かないんですか?」
「聞いてほしい?...私が止めたら、君は進めなくなるでしょう?...君を困らせたくないからね」
敬語を崩した私に彼が泣きそうな顔をする。
全く...これだから、放っておけないんだ。
最初のコメントを投稿しよう!