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「ここ、オススメなんですよ」
15分ほど歩いただろうか。
冴島に連れてこられた店は、BARと言うより喫茶店のような落ち着いた雰囲気の店だった。
「へー」
席に案内されてメニューを見る。
うん、至って普通のバーだな。
「何にしますか?」
「んー、ジントニック」
「はい、じゃあ、僕はミルクティで…」
…ふーん、本当にお茶飲む気だったわけか。
まぁ、それはいいとして…
「で、俺は何で誘われたんだ?」
笑顔で問うと冴島が口角を上げた。
「何故だと思います?」
「さぁ…俺たちは同期ってだけの間柄だと思ってたんだけど?」
質問に質問で返す冴島にため息が出そうになりながら、とりあえず、笑顔は崩さないでおく。
「まぁ、そう焦らず乾杯でもしましょう」
運ばれてきたグラスを傾けながら、冴島を見ると口調は穏やかなものの、目が笑っていない気がした。
俺、こいつに何かしたっけ?
うまっ!仕事終わりの1杯は美味い!
「あぁ…その顔、堪らん」
はっ?
艶のある低音ボイスが囁くように耳元で転がる。
「びっくりした顔もなお良し」
それは、口調こそ違えど冴島の声なわけで…
俺は、突然口調がヘンタイチックになった横の男を恐る恐る見た。
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