秘密の冴島くん

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「…帰るわ」 見回せば、律儀に揃えられた俺の鞄に上着があった。おまけに、サイドテーブルにはミネラルウォーター。 まったく…最初から、襲うつもりなんてなかったくせに。 ただ、休ませる為に連れてきたのだと分かる様子に毒牙を抜かれる。 「ありがとうな、冴島。絡んで悪かった。もう、飲みには行かないけど、今度飯でも奢るわ」 上着とカバンを持ち玄関へ向かう俺に、冴島は何も返さなかった。 …バタンっ ドアを閉めると現実に引き戻される。 これで良かったんだと思う。 これで、変な道には進まなかったわけだし、これが正解なんだ。 帰り道にぼんやりと空を見る。 …それにしても、何だよ、あの口調。 ほんと、笑える。
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