141人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
「...そうですね」
まるで営業トークでもしているかのような雨宮の張り付いた笑顔が、こちらに向く。
まだ、私の声は届くだろうか?
「雨宮の気持ちから逃げてすまなかった...私に時間をもらえないだろうか?」
頭を下げながら、雨宮の反応を待つ。
告白をしている訳では無いのに、心臓が波打っていた。
正直なところ、意識し始めてから数ヶ月しか経っていないし、雨宮から言い出したとはいえ、どこまで本気なのか分からない。
だが、それは、想いを告げてくれた雨宮に対して、私が適当に流して良い理由にはならない。
「...まさか、本気にしたんですか?」
雨宮の声に顔を上げる。
あぁ、全く...君という人は...
「あんなの...冗談、ですから...」
どうして気が付かなかったのだろう。
仕事をソツなくこなし、女性も上手くあしらう君が、不器用だということに。
「...冗談にしたいなら、それでもいい。これっきりにしたいなら、もうこの話はしないよ」
...ポスッ
下を向いているせいで、少しだけ低くなった雨宮の頭に手をのせる。
最初のコメントを投稿しよう!