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「龍樹~!学校行こう」
高校へ通うようになってから、日課で毎朝、1歳上の幼なじみである奏(カナデ)が玄関を開けながら呼んでくれる。
「うん、準備できたから行くね」
2階から急いで1階へ向かう僕に奏はヒラヒラと手を振っている。
奏は、髪を後で縛ったりヘアピンで留めたり、学校では目立つ輩だ。
それに対して、少し後ろを歩く僕は名前負けしてるんじゃないかっていう小柄な体に黒縁メガネ。
「ねぇ龍樹、もうすぐテストだけど勉強見てあげよっか?」
後ろをクルッと振り向いて小首を傾げる奏に思わずビクッとしてしまった。
「えっ、悪いよ」
「ちぇー、つまんないの」
少し残念そうに口元を膨らませた奏が前を向くと少しホッとする。
奏の笑顔は心臓に悪いから。
「奏さーん!おはようございます!」
歩く僕らの横を女子が黄色い声を出して通り過ぎる。
「...はよ」
一応は返事をするみたいだけど、取り付く島もないようなぶっきらぼうな言い方。
でも、そんなことを感じるのは僕だけのようで、女子は笑顔で喜んでいる。
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