long long time a go

5/5

141人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
「諦めるんだ?」 「えっ?」 床に座っているせいで、奏が僕を見上げる形になる。 いつも余裕綽々の奏は、ベッドの上で体だけ起こした僕を見て目を見開いたままだ。 「こんなに僕の心を弄んで?今更捨てるんだ?」 その頬に手を当てて掬い上げるように上を向かせる。 気がつけばいい...なんにも知らないのは、僕ではなく奏の方なんだと。 追いかけてきたのは自分だと思い込んで、追われていることに気づいてなかったのだと。 「龍樹?」 「ねぇ、眠らせて何をするつもりだったの?」 ビックリしたままの奏は本当に可愛いお姫様のようだ。 反対の手で髪に指を絡ませていく。 知ってるよ?薬で眠らせたところで、奏が僕に手を出せないってこと。 「もしかして...」 クイッと持ち上げた顎に顔を近づけて、かなでの唇を味わう。 「んんっ...」 「こんなこと...とか?」 少し上ずった声が一層僕を刺激する。 何も知らないお姫様、僕は王子様にはなれないけど、結婚したいという望みは叶えてあげるよ? 「結婚しようね…」 「...っ」 幸せ噛みしめているのか、言葉を失うほど震えてる奏に僕は微笑み掛けた。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加