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「諦めるんだ?」
「えっ?」
床に座っているせいで、奏が僕を見上げる形になる。
いつも余裕綽々の奏は、ベッドの上で体だけ起こした僕を見て目を見開いたままだ。
「こんなに僕の心を弄んで?今更捨てるんだ?」
その頬に手を当てて掬い上げるように上を向かせる。
気がつけばいい...なんにも知らないのは、僕ではなく奏の方なんだと。
追いかけてきたのは自分だと思い込んで、追われていることに気づいてなかったのだと。
「龍樹?」
「ねぇ、眠らせて何をするつもりだったの?」
ビックリしたままの奏は本当に可愛いお姫様のようだ。
反対の手で髪に指を絡ませていく。
知ってるよ?薬で眠らせたところで、奏が僕に手を出せないってこと。
「もしかして...」
クイッと持ち上げた顎に顔を近づけて、かなでの唇を味わう。
「んんっ...」
「こんなこと...とか?」
少し上ずった声が一層僕を刺激する。
何も知らないお姫様、僕は王子様にはなれないけど、結婚したいという望みは叶えてあげるよ?
「結婚しようね…」
「...っ」
幸せ噛みしめているのか、言葉を失うほど震えてる奏に僕は微笑み掛けた。
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