念願のケータイ

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高志は家に着くなり玄関から母を急かした。 「早く早く!!」 その場に鞄を置いたまま母を呼ぶ。 すると家の奥からパタパタとスリッパを鳴らしながらエプロン姿の母、律子<リツコ>が小走りで来た。 「全く、ケータイケータイってぇ。ケータイしか頭に無いの?アンタには」 律子の言葉はまさに図星だった。 「いいから早く早く!」 そうして高志は律子の運転で一番近くのauショップに向かった。 ─────────────────── そして到着。 四角い建物にオレンジ色の看板、その姿は高志の目にはいつもより神々しく見えた。 高志はドキドキしながら自動ドアを通る。 「おお!!」 シンプルかつ明るい店内には幾つかの展示台があり、その全てに所狭しとケータイが置かれていた。 「ほら、好きなの選びなさい。」 「本当!?じゃあ選んでくる!!」 律子に背中を押され、高志は目を輝かせながらケータイに近づいた。 「今日はお子様のケータイをお探しですか?」 いつの間にか側に居た店員が、営業スマイルで律子に話しかけた。 「はい、なるべく安くしたいんですが…」 律子は苦笑いで答えた。 家計もそんなに楽ではない。 ケータイ代も馬鹿には出来ないのだ。
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