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「行ってきまーす!」
登校する時間になり、家を飛び出す高志。いつもの如く全力疾走だ。
早起きしたのに、何故遅刻ギリギリの時刻に家を出たのかは、この際割愛させて頂く。
「うぉぉぉぉぉ!!」
高志は朝の日差しを受けながら、人気の疎らな通学路をただひたすらに駆け抜けた。
───────────────────
学校。
ガララッと、勢いよく扉が開く。
「セーーーッフ!!」
その声、そのテンション。紛れもなく高志だ。珍しく遅刻は免れたようだ。
この説明で分かる通り、高志は遅刻の常習犯である。別に本人に悪気はないが、誰かに迷惑をかけていないだけ良いではないかと解釈しておくことにしよう。
彼に遅刻を改善しようと言う意思が薄いのはまた別の、他愛もない問題である。
「オッス」
自分の席に向かう高志に声を掛けたのは、高志の親友の相馬 一弥<ソウマ カズヤ>だ。
「おいす」
高志は挨拶も早々に席に着く。高志の席は一弥の席のすぐ前だ。
椅子に座り、そのまま一弥の方を向く。
「なあなあ、俺さ、今日ケータイ買うんだ!!」
「知ってる、3日前から何回も聞かされてるからな。まるで口癖みたいにな」
一弥が茶化す様に言った。
正しく言えば4日前からなのだが、日数の感覚が麻痺するくらいに執拗に訴えかけられていたからである。ともかくそんな事は高志にとってどうでもいい話にはかわりない。
「あっはは……そうだっけ?」
「あぁ、お前の記憶力はどうなってる。夜明けと共に母なる大地に葬り去られているんじゃないか?」
一般的に言うとウザい部類に入るであろう高志を、一弥は簡単にあしらった。
流石親友といった所だろうか、扱いには慣れている。
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