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天音学園の一年校舎。
その校舎にある、三組の教室の窓際の席に俺はいた。
頬杖をついて俺が見つめる先には、少し赤く染まった木々。
風に揺れる葉っぱを、ため息混じりに眺め思った。
「時は常に何かを奪っていく怪盗だ」と――
普通の人は赤く染まった木々を見ると大抵の人がこう思うんじゃないだろうか?
「うわ~、綺麗だね(だな)」
はい、それは間違いです。
俺のようなモテない男子の皆さんはわかってくれると思いますが、秋が来るというのは大変なことなんです。
それはこの季節の訪れが、今年も《時間》という大泥棒が確実にソレを盗んでいったという証拠だからだ。
それは何か? 教えましょう!
それは《夏とプールと水着の美少女達》です。
「バッカじゃないの?」
はい。今のを聞いて世の中の八割以上の女性がこう思ったでしょうね。
ですがね? 思春期真っ只中の男子が法律に触れないラインでクラスの女の子達をマジマジと見れて、しかも遊べる絶好のチャンスを見逃してしまったのは本当に大きいんですよ?
しかも! しかもですよ!? 見れなくなるだけならまだしも、うちの学園はそもそも水泳の授業が男女別々だったんですよ!
だから見てもない! なにこの神の悪戯!
……まぁ、読んでる方はそんなの知らないし、俺が馬鹿だと認識しましたよね。
本当にごめんなさい。
こほん! とまぁ残念ではありますが、現時刻を持ちましてプールサイドの水着美少女見ほうだいという特別イベントが本日の午前中での授業で終了したことを報告しました。
あ~……本当に夏も終わりだ。
「…………」
…………。……あっ! 遅れましたが、俺は一年三組に在籍している橘勇(たちばな いさむ)といいます。
宇宙人でもなけば、未来人でも超能力者でもない。もちろんニュー〇イプや強〇人間でもない凡人の多分この小説の主人公的な存在の人間です。
なんか本当にいろいろと、ごめんなさい。
え~っと、今更になって言うのも可笑しいことなんですが、現在の季節は十月で過ごしやすい〝秋〟をむかえてます。
高校生活が始まりすでに約半年が過ぎ去り、最初に張り詰めていた学園生活が嘘のようにぶっ飛び、今は机に俯せになって覇気すらありません。
思えば入学時からあまりが変わってない姿勢でお送りしております。
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