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その日の夜。
セイレーンは昼間とは別の岩場に座り、歌を口ずさんでいました。
それは己の姿を呪う哀しい歌。
その最中、リロの優しい音色が聞こえてきました。
ポロン、ポロン――
慰めるかのような優しい優しい音色。
セイレーンは歌うことも忘れその音色に聞き惚れていました。
夜の闇に溶け込むように。
さざ波に溶け込むように。
音色はまるで、そこにあることが当然のように何の不調和もなく響き渡りました。
嗚呼、なんと優しい音色。
自然に愛された音色なのでしょう。
セイレーンはそう思いました。
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