優しい吟遊詩人

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その美しさにセイレーンは思わず見惚れてしまいました。 そして、悲しくなりました。 自分とは全く違うのだと。 「私は吟遊詩人です。貴方の歌声はとても綺麗で…よろしかったら聞かせてくれませんか?」 セイレーンは驚きました。 そんな言葉を掛けたのは青年だけだったからです。 青年は杖を使い、セイレーンの側に近寄ろうとします。 しかし、不安な足取りでした。 セイレーンがその姿を凝視していると青年はふと顔を上げてセイレーンの方を見ました。 薄ら目を開けた瞳は何も捉えず、ただ虚空を見つめていた。
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