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例え夜であろうと今宵の月は明るく、決してセイレーンを見つけられないわけではないのに青年は何も見ていませんでした。
「嗚呼…すいません。私はもとより光を持っていないのです」
青年は苦笑混じりにそう言うとまた瞳を閉ざしました。
青年は、『見る』という行為を持って生まれてこれなかったのです。
「気味が悪かったでしょう?すいません」
青年は謝りました。
セイレーンにはその理由が分かりません。
何故彼は謝るのでしょう?
見つめられないというだけなのに。
セイレーンは岩場から現れました。
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