優しい吟遊詩人

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セイレーンは歌を口ずさみます。 美しい声音で。 だが、それは歌であってそれは歌ではありませんでした。 「…私を心配してくださるのですか?ありがとうございます」 青年はそれを汲み取ったのか、微笑みかけました。 「でも、貴方の方が…」 そう言うと青年は不安定な歩き方のままセイレーンに近付き、その手を取りました。 「ほら、ほったらかしたからこんなことに…少し包帯がありますから大人しくしてくださいね」 青年はそういうと、見えないその目でセイレーンの腐った腕や足に包帯を巻いていきました。
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