語り手 歌い手

5/6
前へ
/34ページ
次へ
セイレーンはそれを嬉しく思いましたが、力なく首を横に振りました。 『私は醜い魔物です』 「魔物だからなんですか?愚かな戦いを繰り返す人の方が余程、魔物と呼ぶべきです。それに…」 手からそっと、セイレーンの頬にしなやかな指を伸ばし、慈しむように撫でます。 「貴方のその心の何処が醜いと言うのです?私が出会った方で貴方程に優しく美しい心の方はいませんでした」 セイレーンは顔を赤らめ水面に顔を背けてはっとしました。 水面に映るのは若い女でした。 崩れていない懐かしい顔。 セイレーンの姿。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加