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(オズワルド)
「……はぁ、はぁ……!」
俺は、ひたすら走る。この広い大地を。どうにか人がいない所まで。
「……はぁ、はぁ……ぐっ!!」
走っている最中、後ろから投げられたナイフが俺の足に刺さる。足の痛みはそのまま俺を地にはいつくばらせる。
「もう逃げられねぇぞ?」
「――ぐぁっ! …っ!」
後ろから来た追っ手の中の一人、虎獣人が俺の足に刺さったナイフをもっと奥に差し込む。
「……別に逃げても構わねぇんだぜ? お前が仕事しなくてもまだまだ他にもいるんだからな?」
「―――!! お前ら………!!」
虎獣人はナイフを引き抜いた。俺の足から血が流れる。俺は後ろを振り返りそいつらを睨む。……こいつらのせいで……!!
「? なんだ、お前。殺る気か? お前一人で俺達から逃げるには“血識”を使うしかねぇぞ?」
「……くっ!」
俺が今ここで血識を使ったら、俺が逃げてきた意味が無い。俺は立ち上がり対峙する。……血識を使わずに。
「……血識は使わない」
「はっ! てめぇが血識使わずに俺達に敵うわけねぇだろうが!!」
次には、目の前の虎獣人は動いていた。他の追っ手達も動く。俺はとりあえずクローを近づく虎獣人に振る。……しかし、あっさりと手を捕まえられてしまう。
「……遅いんだよ、お前は…」
「…ぐぁっ!!」
虎獣人の持っているナイフが俺の右肩に食い込む。他の追っ手達の攻撃も、虎獣人に捕まっているためにまともに喰らってしまう。……背中、足、腕、腹…………。俺の体の至る所に深い切り傷が増えていく。体中からとめどなく血が流れる。
「……かはっ……!」
俺の体は吐血と共に後ろに倒れる。体を動かそうとしても激痛が走るだけで動かない。そして俺の腹を上から虎獣人の足が踏む。
「……がっ! ぁ……!!」
「……お前が逃げだすのが悪いんだぜ? 行くぞ。こいつはこのまま放って置いても死ぬだろ」
そう言って虎獣人はどこかに行った。その後に続いて他の追っ手もどこかに行った。……どこか? どこだろう。ハンターズに戻ったのか。そんな事もうどうだって良い。あのまま人を殺し続けるくらいなら俺が死んだ方がマシだ。………他の奴らもどうにか逃げてほしい。気付いてほしい。人の命の尊さを。それを奪う罪深さを………。
そんな事を考えながら、俺は深く、長い眠りについた。もう起きることの無いであろう眠りに……。
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