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「―――どうしたラルド。目ぇ覚めたのか?」
すると、部屋にまた誰か入ってきた。今度は獅子獣人だ。
「あっ、隊長聞いてくださいよ。この人僕に、………なぜ助けた。って聞いてきたんですよ!? 有り得なくないですか!?」
別に俺の言った部分を真似する必要は無い気がするが、それ以前にいちいちそれを他人に伝えることかどうかを不思議に思った。
「……なに? てめぇ助けてもらっときながらそれはねぇんじゃねぇか? オイ」
「……ぐっ!」
獅子獣人は俺の肩を掴み顔を寄せてくる。ちょうどあの時虎獣人に切られた肩だった。肩を掴まれた瞬間激痛が走った。出すつもりはなかったが、自然と声が出てしまう。
「あぁぁダメですよ、まだ乱暴にしたら! まだ全然傷が癒えてないんですからぁ」
「おっと、すまねぇ」
獅子獣人は俺の肩から手を離す。離した後もまだ痛みがあった。……今更だが、俺の体には包帯が至る所に巻かれてあった。おそらくあの時切られた箇所全てに巻いたのだろう。
「……迷惑かけたようですまないな。すぐに出ていく」
「ちょ、ちょっと!」
俺は手をつき立ち上がろうとする。体中に有り得ないほどの痛みが走るが、これ以上この人達に迷惑をかけるわけにもいかない。すると今度は獅子獣人に胸を押され、無理矢理またベッドに寝かされる。再び激痛が走り、声を出してしまう。今度は同時に口から少量の血も吐き出す。
「……ぐぁっ! かはっ!」
「た、隊長!!」
「……てめぇどこ行く気だよこんな体で。俺らはてめぇに無理されて、そこら辺でくたばってもらった方が迷惑なんだよ」
さっきとは違う、脅すように話すその声は、俺をこのベッドから動かなくするには十分だった。
「………すまない」
「…わかったならとっとと寝ろ。……ほら、行くぞラルド」
「ちょ、ちょっと隊長ぉ」
そう言って二人は部屋から出ていってしまった。俺は一人部屋に取り残される。
「……俺は生きていてもいいのか? 俺は死ぬべき奴なんじゃないのか? ……あんなにも酷いことをした俺は………!!」
気付けば、俺の体は震えていた。前の事を思い出したからなのか。……もう考えるのは止めよう。俺はとりあえず隊長と呼ばれていた獅子獣人の言う通り、寝ることにした。……何をするにしても、この体が動かなければどうすることも出来ないのだから。
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