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「―――!! ……夢…」
夢の俺の意識が途絶えるのと同時に、現実の俺の意識は目覚める。昨日よりかは動くのは楽になったが、まだやはり痛みはある。気がつけば俺は大量の汗をかいていた。
「……大丈夫? すごくうなされてたけど…」
横を見ると、昨日の犬獣人がそこにいた。
「……心配するな」
俺はそれだけ言って視線を天井に向ける。窓から差し込む光によって照らされて、無地の白い天井がよく見える。
「あっ、待ってて! ご飯取ってくるから!」
そう言って犬獣人は扉の方へ向かう。……動けるようになったら何か礼をしなければ。
「―――うわっ! ご、ごめんミックさん!」
扉に向かった犬獣人の慌てた声が聞こえて、そちらの方に視線を向ける。そこにはスープを持っている猫獣人が立っていた。
「ラルド危ないだろ? 零したらどうすんのさ。せっかく作ったのに」
「……ご、ごめん」
そんな会話をしながら二人は俺にスープを持ってくる。遠くからでもした良い匂いが、近くで嗅ぐと更に食欲を増させる。
「はい、怪我人さん。俺の特製スープだよ」
俺は上半身を起き上がらせスープを受け取る。手渡されたスプーンでスープを一掬いして、俺の口に運ぶ。
「……ん、美味い」
正直な感想だ。こんなスープは一度も食べたことが無い。……勿論食べれるような環境にいなかったというのもあるが。
「ミックさんの料理の腕は超一流だよ!」
「へっ、そんな事言うなよ。期待されるだろ?」
「大丈夫だって! ミックさんの料理は誰が食べても美味しいって言うよ!」
二人がそんな会話を楽しそうに進めている間に、俺はスープを平らげた。
「……ありがとう、美味しかった」
「どういたしまして! 俺も美味しく食べてもらえて嬉しいよ!」
俺はスープの器をミックと呼ばれた猫獣人に返す。
「……それよりもあんた、ホントに大丈夫か? そんなに包帯ぐるぐる巻くほど大怪我してたんだろ?」
そう言いながら俺の体を指差す。上着は脱がされていたので、上半身に巻かれた包帯はあらわになっていた。肩や腹などに巻かれた包帯は血が滲んでいるのがわかる。
「……痛みはするが幾分マシにはなった。……助けてもらって何もしないわけにはいかない。何か手伝える事は無いか?」
俺が頼んだわけではないが、迷惑をかけたのには変わりない。俺は二人に問うた。
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