第一話

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「…まぁ座れ」 俺は隊長に言われた通り、近くにあった椅子に座った。隊長も自分が使っているベッドに座る。 「……とりあえず聞きたい事がある。勿論言いたくなけりゃ言わなくて良い」 「……わかった」 「……なんであんな大怪我して倒れてた。しかも全く人のいない場所で」 聞いてきたのはそこ。確かに助けた側としては気になる所だろう。 「…追っ手に追われていて、とりあえず誰の迷惑にもならないよう人のいない所まで逃げた」 「で、結局仕事中の俺らが偶然拾ったってわけか。……追っ手。お前どこからか逃げて来たのか?」 「………」 あまり思い出したくない。あの時の記憶は。頭がおかしくなりそうな気がする。 「……わかった。じゃあ、ヴァイスの決まり事だ。決まりを守れなかったら何かしら罰を与える。わかったな?」 俺は無言で頷く。 「一つは他人の過去を聞くな。ヴァイスにいるみんな、辛い過去を持ってる。俺も詳しく知らないがな」 誰だって辛い過去は持っているようなものだ。それをいちいち言及するような事はしない。……俺自身、されると困る。 「…二つ目。一人で無理はするな。そして死ぬな。どんな事があってもだ」 「……わかった」 「……そして最後。魔物はともかく、必ず人は殺すな。誰であっても、だ。これが守れねぇ奴は出ていけ」 「……あぁ、絶対に殺さない」 ……もう、殺してはいけない。誰であっても、必ず。 「それが守れれば後は自由にして構わん。ただ依頼を受けるときは俺に伝えろ。いいな?」 「わかった」 そう言って俺は立ち上がり、部屋を後にした。俺が部屋から出ると、ラルドがそこに待っていた。 「どうした?」 「あ、うん。案内しようと思って! いろいろとさ。まだ外に出てないからわかんないでしょ?」 ……確かに、目が覚めてから外を見てないためここがどこなのかわからない。外から聞こえてくる音から、賑やかなのはわかる。 「あぁ、そうだな。頼む」 「うん! 行こ!」 俺はラルドに手を引かれながら、外へと連れ出された。……若干傷は痛んだが。
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