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「…まぁ座れ」
俺は隊長に言われた通り、近くにあった椅子に座った。隊長も自分が使っているベッドに座る。
「……とりあえず聞きたい事がある。勿論言いたくなけりゃ言わなくて良い」
「……わかった」
「……なんであんな大怪我して倒れてた。しかも全く人のいない場所で」
聞いてきたのはそこ。確かに助けた側としては気になる所だろう。
「…追っ手に追われていて、とりあえず誰の迷惑にもならないよう人のいない所まで逃げた」
「で、結局仕事中の俺らが偶然拾ったってわけか。……追っ手。お前どこからか逃げて来たのか?」
「………」
あまり思い出したくない。あの時の記憶は。頭がおかしくなりそうな気がする。
「……わかった。じゃあ、ヴァイスの決まり事だ。決まりを守れなかったら何かしら罰を与える。わかったな?」
俺は無言で頷く。
「一つは他人の過去を聞くな。ヴァイスにいるみんな、辛い過去を持ってる。俺も詳しく知らないがな」
誰だって辛い過去は持っているようなものだ。それをいちいち言及するような事はしない。……俺自身、されると困る。
「…二つ目。一人で無理はするな。そして死ぬな。どんな事があってもだ」
「……わかった」
「……そして最後。魔物はともかく、必ず人は殺すな。誰であっても、だ。これが守れねぇ奴は出ていけ」
「……あぁ、絶対に殺さない」
……もう、殺してはいけない。誰であっても、必ず。
「それが守れれば後は自由にして構わん。ただ依頼を受けるときは俺に伝えろ。いいな?」
「わかった」
そう言って俺は立ち上がり、部屋を後にした。俺が部屋から出ると、ラルドがそこに待っていた。
「どうした?」
「あ、うん。案内しようと思って! いろいろとさ。まだ外に出てないからわかんないでしょ?」
……確かに、目が覚めてから外を見てないためここがどこなのかわからない。外から聞こえてくる音から、賑やかなのはわかる。
「あぁ、そうだな。頼む」
「うん! 行こ!」
俺はラルドに手を引かれながら、外へと連れ出された。……若干傷は痛んだが。
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