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グルルルルルル………!!
「―――!! ラルド!!」
いつの間にか寝てしまっていた俺は、魔物の気配と威嚇するような声で目が覚めた。
「ん~……!! なんでこんな所に魔物が!?」
起きたラルドは、すぐに身構える。……敵は6匹。どうする。血識を使うか………。
「オズワルド、僕に任せて!」
ラルドはそう言うと、ポケットから緑の珠を取り出した。
「…どうするつもりだ?」
「まぁ見ててよ! おいで! エア!!」
手に持っていた緑の珠が光るのと同時に、珠を上に投げた。更に光が増していく。
『お呼びですか~?』
「……! 精霊か!」
出てきたのは小さな生き物。薄い緑色をした小鳥が珠の代わりに現れた。
「そういうこと! オズワルド、僕から離れないでね!!」
そう言うと、一気にラルドの体から魔力が溢れ出す。それと同時に魔物達が一斉に襲い掛かってくる。……まずい! まだ詠唱も始めていない状態から一斉に来られたら、ただでは済まない。……やはり俺が。
「サイクロン!!」
「……なっ!?」
俺が血識を使う寸前に、ラルドは魔法を唱えた。……まだ詠唱は始めていなかったはず。……詠唱破棄!? ラルドの立ち位置を中心に強い竜巻が起こる。近くまで来ていた魔物達は勢いよく吹き飛んだ。そのまま魔物達は逃げていく。
「……その歳で詠唱破棄。……凄いな」
「そ、そんなこと無いよ! ……自分でもよくわからないけど、一度見た魔法は詠唱破棄出来るんだ」
……そんなこと、最高クラスの魔導師ですら出来るかどうか怪しいところだ。
「……それよりもおかしいよ。いつもここには魔物なんて来なかったのに…」
「……そうなのか?」
「…うん。それにここの近くは魔物は少ないはずなんだ」
よくここに来ているラルドが言うのだから間違いないのだろう。……だとすると何故……。
「……考えても仕方ない。とりあえず帰ろう」
「……それもそうだね」
このままここにいて、また魔物が襲い掛かってこないという保障はない。俺達は丘を後にした。
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