女性

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風がひときわ強く吹いた。 枯れた葉が舞い、髪がおもいきり乱れ、私はスカートの裾を軽く押さえる。 パラパラと風に流されていく葉のなかにふと、白いわたげのようなものが交じっていることに気がついた。 ウサギのしっぽくらいの大きさのそれは、日光に照らされ、時折刺すようにきらりと光る。サイズさえもっと小さければ、何かの植物のわたげなんだとすんなり思うことができたのだろうが、私にはそれがわたげというよりもわたぼこりに思えてしまった。 ――この街、汚れてる。 遊歩道をぬけるとがらんとした空間に出る。この公園の中央広場だ。 私は隅に設置されているベンチの一つに腰を掛けた。鞄からお気に入りの作家の本を取り出すと表紙のカバーの絵を軽く指でなぞる。 ――ああ、違うのかな。 汚れているのはこの街ではなく、白光するわたぼこりを見て『汚れてる』と勝手に認識してしまう私の方か。 深く息を吐くと、白いもやがふわっと広がる。人がまばらにしかいない公園のベンチに一人。挟んだしおりを探しながら、こんな風に読書でもしていれば誰かと待ち合わせでもしているように見えるのだろうか、などと思考をめぐらす。 空が広がりと深みのあるブルーに染まっていた。おかげでこんなに日が照っているのに、かなり寒々しい。この青空が、乾燥しきっている空気と切れるくらいに冷たい風を強調してしまっているのだ。
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