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早々に手がかじかんでくる。
風が我が子をあやすように鳴き、枯葉がぱさぱさと落ちてくる。風に吹かれた白く大きいわたぼこりが私の頬にまとわりついてきた。うっとおしいので軽く手で払い、ついでにマフラーの位置を直す。
――手、痛い。
首筋や膝が寒いのならマフラーや膝掛けを使えばいい。しかし本を読んでいるため、どんなに手がかじかんでも手袋を使うわけにはいかなかった。ページを上手くめくれなくなってしまうからだ。
手に息を吹きかけていると、さっき払ったばかりなのにまたわたぼこりが頬に触れてくる。あまりにもうっとおしくて、思わず鷲づかみにすると、それはほんのり温かかった。
訝しく思い、まじまじと手の中にあるものを見る。わたぼこりと目が合った、ような気がした。
――馬鹿馬鹿しい。
ただのわたぼこりと目が合うだなんて。
わたぼこりは私の手の中でキョトンとしているようにも見える。いやいや、キョトンも何もない。あるわけがない。
私は手の中のわたぼこりを放った。ふわっと空中に舞い、風に吹かれて飛んでゆく。
私は本を閉じ鞄にしまう。予想以上の寒さと、うっとおしいわたぼこりに根負けしてしまったのだ。どこかゆっくりとくつろげる店に入って熱いコーヒーを飲もう。そこで読書をしよう。溜息一つして私は立ち上がった。
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