女の子

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女の子

わたぼこりってどうしてこんなに気になるんだろう。 冬の廊下はひんやりとしていて、お掃除の時間は特に寒い。でも私はほうきの係りだからまだまし。ぞうきんの係りの人は大変だ。手がじんと溶けだしてしまうくらいに冷たい水でぞうきんをぬらし、しぼり、お掃除が終わったら今度はそれをきれいにすすがなくてはならない。 私がほうきでほこりを掃く。するとその掃いたところだけをぞうきんの係りの三人が拭いてゆく。 廊下に這いつくばってもくもくとぞうきんを動かす三人の、小さく震える唇からは弱々しい声が漏れている。小さな訴えを含んだ声は、冷たい空気の中にふわりと浮かんでは消えてゆく。 手が赤いよ。痛い。まだ終わんないよ。はやく、はやくしようよ。はやく終えてしまおうよ――。 「あっ」 ひとかたまりになっていたわたぼこりがふわっと宙に舞った。雑に掃きすぎたのだろうか? ぞうきんの係りの人たちはみんな廊下に立てひざになっていて、舞うわたぼこりをぼんやりと眺めている。みんな寒すぎてぼうっとしているようだった。
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