女性

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コーヒーがまずいと泣きたくなる。 これだったらコーヒーじゃなくてただのお湯を飲んだほうがまだましだ。 ――それとも、椅子かまあり、屋根があり、暖房が入っているというだけで満足するべきなの? ため息を吐く。吐き出した息は特に白くなることもなく、私を取り巻く空気の中に溶け込んでいった。 本の続きを読もうと鞄を開く。するとふわりとわたぼこりが飛び出してきた。わたぼこりは私を見てうれしそうに笑った、ように見えた。 ――さっきの…。 さっきのわたぼこ…いや違う。そんなわけがない。 無意識にコーヒーを一口すする。まずい。 「このコーヒー、もっとおいしければいいのに」 何かを取り繕うように、でも何も取り繕えずに、少し錯乱しながら言葉をもらす。と。 いきなり雷鳴が響いた。驚いて窓の外を眺め、大雨が降りだしたのを見て、舌打ち。 ――雨具なんて持ってないのに。 今日何度目かのため息を吐き、今度こそ鞄から本を取り出す。 ――もういいや。雨が止むまで読書をしてやり過ごそう。 どうせにわか雨だろうし。気を取り直してコーヒーに口をつける。 「ん?」 いつの間にやらわたぼこりはいなくなってしまった。でも、いつの間にやらわたぼこりのことなどすっかり忘れてしまった私は、突然美味しく感じられたコーヒーに首を捻りつつ、手にした本のカバーをにらみつけた。
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