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女の子
「雨、降らないかな」
一番右端のぞうきんの係りの人が言った。
「あー、次の授業の体育、外かぁ」
一番左端のぞうきんの係りの人が言った。
「でも、すっごい晴れてるよ」
真ん中のぞうきんの係りの人が言った。
テルテルボーズ逆さにつるす? 間に合わないよ。
先生逆さにつるす? 誰がするの?
大きなわたぼこりが、小さく開いた窓から外へ飛んでゆく。
「はやく掃除しちゃおうよ」
私はわたぼこりを見ながら言った。ぞうきんの係りの三人も風に吹かれるわたぼこりをぼんやりと眺める。
そうだねそうしよう、手が赤いよ、痛い本当に痛いよなどと口々に言い、掃除を再開した。
ウサギのしっぽくらいの、白いわたげのようなものが、校内に植えてあるびわの木にひっかかっている。嫌味なくらいきれいに晴れている空の下、嫌味にしか見えない上下長袖のジャージを着た先生の指示で整列する私たち。びわの木のわたげもどきを見るともなしに見ながら、テルテルボーズの逆さづりくらいならやっておいてもよかったかもしれない、などと後悔する。
先生つるし上げられた?誰に?奥さんかな?
話し声に振り向くと、さっきのぞうきんの係りの三人だった。まだ赤くなっている手に白い息を吹きかけながら楽しげに話している。
半そで半ずぼんの体操着姿で震えつつ、先生の指示に従って体操隊形に広がった。おでこにバンソウコーをはった先生が笛をくわえる。
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