零.  始

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「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!……く……そっ!」  酸欠のせいか貧血のせいか、頭がくらくらする。  それでも逃げなければならない。今の自分に、『アレ』を倒す手段など一つもないのだ。  ならば時間を稼ぐしかない。友人達を逃がすためにも。  ざっざっざっざっ。  そんな音がずっと背中を押している。  確実に近くなっていくソレに、怯えを感じながらも走り続ける。  自分の足音と混ざり合って、不協和音を生み出す恐怖の音色。  その音が一瞬やめば、それは既に迫っている合図だ。  その時は――――――。 「ッ!!」  屈む。  すると頭上を黒い塊が飛び越していく。  その姿を見るよりも先に逃げ道を探して、走る。  この繰り返し。しかし、確実に体力は削り取られていく。 「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!……ちくしょう!!!!」  どうして、こうなった―――――――?
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