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夕陽の昇る真っ赤な空から赤橙色の光が降り注ぎ、町を照らす。
そうして赤く染まった町の中、市街地の中心に位置する『桜咲商店街』では、齷齪と買い物に励んでいる人々で賑わっている。
「……うーむ」
そこで、彼は膨らんだ買い物袋を片手に腕を組み、唸っていた。
やや短めの黒髪、長い足に男子高校生の平均並の背丈。
服装は紺色のブレザーに朱色のネクタイ。
それが今の彼を説明できる、特徴。
彼の名は南神 晶(ながみ あきら)。
一軒の肉屋『やまなか』を前に、店頭に並べられた肉を見つめて、ただひたすらに唸り続けていた。
「……マイッタ」
そう、参っていた。
何故かと言うと、今日の晩ご飯の為に買いに来た挽き肉が全く残っていなかったからである。
「今日はハンバーグの予定だったのに……肉が無いんじゃハンバーグのハの字もない……」
しかも挽き肉以外の材料は既に買い揃えてしまった。
今更どうすれば良いのだろうか。
と訊いても、誰かが返事を返す筈もなく。
―――――――マイッタ。
「ごめんなぁ晶くん……ついさっき売り切れたんだよ~……」
肉屋『やまなか』の店主である中年男性、山中は常連客である晶に申し訳なさそうに言った。
晶は慌てて首を横に降る。
「いやいや、全然イイですよ。遅くに来た俺が悪いんですから」
本音を言うと全然良くないが、気を遣わせない為にわざと明るく振る舞う。
すると山中が突然、そうだ、と閃きの声を上げて手を打った。
「代わりと言っちゃなんだが他の肉、3割引にしてあげるけど、どうだい?」
「む!?」
これは嬉しい。
棚からぼた餅、略して棚ぼたと言う奴か。
「も、もう一声っ……!」
ここぞとばかりに晶は懇願する。
これが、値引き合戦というもの。
「ほほぅ……よ~し、ならば……売れ残りだがステーキを二枚、つけようじゃないか!」
なんと3割引の上にステーキがオマケに!?
「買ったっ!!豚バラ肉300グラム下さい!」
それを聞いた途端、晶は迷わず紙幣を財布から取り出し、ハンバーグとはまるで関係のない肉を購入した。
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