零と壱

3/3
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
平気でズカズカと私の領域に入り込む彼女。 …始めは正直、迷惑極まりなかった。 訳のわからない論理を振りかざし、領域干渉を重ねてきた彼女(リリー)。 …でも、私だって他人に同じことをしているのかも知れない。 家賊にはお節介をやきたがるのに、 自分には干渉して欲しくない。 凛織の偉いところは、他人の領域に踏み込んだ分だけ、自分をオープンにしているところ。 私とは、違うんだ……… 「あ、今自分を卑下した」 「ふぁっ!?」 気が付くと、すぐ目の前までリリーが顔を近付けている。 「近い近い近い近い近いッ!!!(汗」 私はリリーを押し戻した。 「バレバレだっての。また下らない自分を蔑むような論理を組み立ててたんでしょ?」 私は黙って目を逸らす。 嘘を吐くのは、苦手だ。 「莫迦ね、宵ちゃは本っ当」 凛織は伸びをした。 「何のために家賊がいるの? 殻を持った宵ちゃをありのまま受け入れてくれてる家賊はさ、」 私はハッとした。 そうだ、私が殻から出るのを待っててくれている家賊がいるではないか。 なのに自分は。 私は自嘲気味に笑った。 「いつもいつもありがとう、リリー」 「礼には及ばんよ」 リリーは再びベッドに座り、ボタンの高速連打を始めた。 鏡の向こうにいる自分に励まされる。 リリーは私の鏡の虚像で、 いつもそばにいる不思議な存在。 ジレンマの様な、整った関係。 「宵ちゃ」 「何?」 「愛してる」 「ありがとう、私もだよ」 「特別?」 「…否」 私は天井を見た。 「特別では、ないかな」                 《完》
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!