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とある日の昼下がり。
此所は殺人鬼の一賊のためのパブ、《Cape Of Origin》。
経営するのは、《操策料理(トリックディッシュ)》零崎蔦織(ツタオリ)という、25歳の女の殺人鬼。
肩より少し長いくらいのセミロングの黒髪を後ろで一つに括り、薄緑色のバンダナをしている。服装はGパンTシャツというラフな格好に黒い長いギャルソンエプロン。
時折欠伸をしながら、カウンター内で黙々と作業をしている。
そこへ、入口の扉を開けて少女が入ってきた。
「蔦織さん、こんにちは」
落ち着いた長めのショートの茶髪、右側に赤メッシュが一房。
身長はやや高めでスーツを身に纏い、胸元にクロスのペンダント、上着の襟ではヘ音記号を象ったピンズが輝く。
「ああ宵ちゃん!久し振りだねぇ」
蔦織は作業を止めて訪問者──《絶対音感(マエストロ)》零崎宵織(ヨイオリ)に応じる。
「どう?最近は」
カウンター席に腰掛けた宵織に、蔦織は尋ねる。
「あまり変わりないですね。相変わらず、って奴です」
宵織は、表の世界では「宵闇零(ヨイヤミ・レイ)」という名で探偵をしているのだ。
しかし、家賊の前では表の話はあまりしないことにしているようである。
「取り敢えず、何か飲む?」
「あ…はい、お願いしてもいいですか?炎天下で喉渇いちゃって……」
「OKー、宵ちゃんはお茶が好きなんだっけ?」
「はい、お願いします」
宵織は上着を脱いで隣りの席に畳んで置いた。
「………はい、どうぞ~」
蔦織はグラスを差し出した。
「いただきます」
宵織は一気にグラス半分を飲み干す。
「そうそう、さっき下で明識がさぁー……………………………………宵ちゃん?」
宵織の様子が変である。顔が随分青い。
「ちょ、宵ちゃ………」
そのまま宵織はカウンター席のテーブルに突っ伏してしまった。
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