確かな夢と…

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とある男は友に裏切られ、 親に裏切られ、 恋人にも裏切られた。 それから何もかもに信じること、頼ることを止めた。 何も失いたくないこと故に。 しかし男には夢があった。 それは秘密で育てている狼の子供を立派に育てることである。 その狼の子供は男が最近、偶然に森で弱っているところを発見したのだ。 そして今日もまた、男は狼に会いに森へ足を運ぶ。 森へ着いた男は狼を呼ぶ。 すると森の奥から 身軽に走る狼の姿があった。 男は狼に優しく抱き着き、 まだフワフワした狼の毛を腕いっぱいに感じる。 狼も嬉しそうに男の顔をペロペロと舐め、甘え声を漏らす。 男は狼と過ごす時間が唯一の生き甲斐となっていた。 そしてまた、狼も男を自分の親のように深く慕っていた。 月日は経ち… 狼は立派に育ち、男は夢を果たした思いで自分を誇りに思った。 そして… それと同時に狼を手放すことを考えた。 仕方ないことだ。 狼にも独立する時が訪れたのだ。 本来、狼は群れを成さず、一匹力強く生きる動物。 最近この狼も男の声を聞かないことが多くなった。 男は……決心した。 男は狼を呼んだ。 狼はいつもと違う男の雰囲気を感じとったのか、狼も男の様子を確認するように駆け寄った。 男は暫く成長した狼の姿を黙視し、そして優しく抱き着いた。 前のようにフワフワの体毛ではなく、ゴワゴワした感触になった体毛が狼の成長を物語っていた。 しかし、狼は昔と変わらず男の顔をペロペロと舐める。 たとえ姿は変わろうとも、 男への忠誠心は昔と変わらないのだ。 ふと、狼の鼻に水が滴り落ちる。 何かと狼は水の発生源を確認する。 水は男の目から次々と溢れ出し、頬を伝っていた。 狼は頬を伝う水を舐め取る。 優しく暖かい水をただひたすらに…。 男は狼と幸せな一時を過ごした。また狼も男と幸せな一時を過ごし、一緒になって眠った。 男が目を覚ますと傍らに眠っていた狼は姿を消していた。男は寂しそうな表情はするも、気持ちは穏やかだ。 男が森を出る時ふと森に振り返ると、森の奥のほうで尻尾を振ってこちらを見ている狼が居た。 男はそれを見て嬉しそうに手を振ってやると、狼は満足した様子で一声吠え、森の奥へ姿を消した…。 その後… 男は動物保護者の第一人者となり、新たな夢へと歩み始めた………。 End
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