序章

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元々私は、兄弟達のように自分の才能を磨くためとか、音楽の楽しさを広めるために音楽をしていた訳ではなかった。 私は人に羨まれなり妬まれたりするのが嫌いだった。だから目立ちたくなかった。 ただできもしないと始めから諦めている人たちを見ているのが嫌だったのだ。 だってまるで、自分の隠している弱い部分を見ているように思えたからだ。だから私は普段からバレナイ程度に下手なふりをしてきた。 いつも家族達が何かの発表会やコンサートに行ってるときも、私は留守番をしていた。 だからって寂しいわけじゃなかった。 音楽を教えてくれる先生は来てくれたし、使用人もいた。それに家には楽器が沢山あった。 退屈なんてしなかった。寧ろその時間が好きだった。 私は他の兄弟よりも覚えがいいと先生がよく言っていた。 だからよく他の人が居ないときに音楽ルームでいろんな楽器を弾いていた。 誰も居ないところで、誰にも邪魔されず。静にただ音楽をどう奏でようかと思いながらひたすら無心で弾き続けていた。
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