序章

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だから私は、たったの一度も出たことのないコンクールへ最初で最後の出場をし、優勝候補の子を指しおいて見事優勝してしまった。 そのときの男の子は私に『次会うときは必ず僕が勝つよ』と言って去っていった。 顔は忘れてしまったけれど、あのときの言葉は今でも覚えている。 だけど私は二度と音楽を弾かない。──いや、弾けないのだ。 両親が亡くなったと言うだけでは、普通ならば両親が愛していた音楽を手放したりなど出来なかっただろう。 現に私の兄弟達は今でも音楽を続けている。 ならばなぜ私は音楽を手放したのか… ─それは、あの日…私が出場したコンクールの帰りに両親が事故に遭い、目の前でそれを私は目撃してしまったからだ。 あの光景は、幼かった私の心に深い傷を造った。
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