序章

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あの男の子には申し訳ないけれど、また再会することはないだろう。 私の躰はあの事故以来、音楽に対して過剰な反応をみせた。 音楽を弾こうとしても、奏でようとしても手が震え、演奏することが出来ない。 音楽を聴いていたり、歌を歌うだけでも躰の震えが止まらなくなる。まるで全てに脅え、拒絶しているかのようだった。 だが時々、そんな震えに混ざり、微かな本当に微かな弾きたい、奏でたい!!っとまるで躰が言っているかのような震えに襲われるときがある。まだ自分にそのような感情があったのかという驚きがあった。内に眠る私の才能は、私が音楽を辞めることをきっと許してはいないのだろう。 だから私はここへ来た。 少しでも音楽に対する恐怖心を…あの時の記憶を直すことは出来ないが、それでも音楽を奏ではできなくとも、近くにいても拒絶しないようにするために。 だが、治った処で音楽を再会するかと問われると、私は迷わずNoと答えるだろう──────
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