影人、旅立つ?

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「う、はる姉ェ」 影人が声が聞こえた方を向く。 影人が向いた場所にいたのは、影人の姉、神宮寺遥佳【ジングウジハルカ】であった。 「ねぇ、影クン?何が危ないの?」 遥佳の声には、逃げを許さないような迫力が含まれている。 「別に、はる姉ェには関係ないよ」 それでも影人は心配をかけないように嘘を言う。 「影クン、嘘はダメだよ」 しかし、影人の嘘は遥佳によって簡単に暴かれてしまう。 「ねぇ、影クン。何があったの?私、心配だよ」 影人が何か言う前に遥佳は問う。 「はぁ、はる姉ェには勝てないや」 影人は観念して、全てを話すことにした。 「そ、そんな……」 影人の話しを聞き終わった遥佳がぽつりと呟く。 「そういうことだから、じゃあね、はる姉ェ」 最後にそう言い残し、影人はその場を去ろうとする。 影人が遥佳に背を向けて、玄関に向かって歩き出した。 ガチャン! 瞬間、音がして玄関の扉が思い切り開け放たれる。 「ちっ、長引きすぎたか」 影人が舌打ちをして玄関の扉を凝視する。 「おーい!!影人!!喜べ、来てやったぞ!!」 開け放たれた扉から、影人に向かって、女の声がかけられる。 「影人様、お邪魔します」 続けて別の女の声もした。 「影人、居るー?」 またまた、女の声がする。 「くそ、タイミングが悪い、悪過ぎる」 悪態をつく影人。 同時に、影人の決心した心が、少し揺らいだ。
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