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時計の文字盤に、キスマークがついている。
体を洗えば細胞のすべてが落ちるだろうと思っていたチハルは、
昼間の真っ只中から、イエローコーラを飲んでいた。
そんなチハルを冷徹に見つめるミサとジュンコは、長いまつ毛が邪魔だと思う。
耳掃除のように街を徘徊する三人の少女は、
少女と呼ばれることが大嫌いだった。
あたしたちはいっぱしの女よ、
「ハロー、カエルの王」
そう吐き捨てる三少女は、ベッドメーキングのようなマジックを失敗しつづける街のピエロを、4時間も見物していた。
照りつける太陽が、三少女の肌色を次々と削ぎ落としていく、麦秋の朝。
「一生に一度でいいから、水たまりの下から空を覗いてみたいわ」
「クール」とチハルは言った。
三少女はまず、このくたびれた街を抜け出さなくてはならない。
この博学の牢獄を抜け出さなくては、なにも始まらない。
「真実の気持ちを伝えるのに、言葉ほど邪魔なものはない」
「クール」
「ふうん」あ、アヒル。
朝帰りの人妻が噴水で顔をあらう早朝に、ウィンドウ・テレビを大笑いしながら眺め、
チハルの短いスカートがめくれ能無し男どもの視線をくぎづけにする。
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