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『とりあえず必要最低限の情報を送ってみたよ。後はおいおいね。』
『しかし有機物から構成された君らには知性は宿らないだろうと思っていたんだけど意外だったよ。記憶媒体の容量や処理量の限界はあるけれどもさ、いやあ、驚いた。』
『そうそう、驚いたといえば僕にもこんなに感情の起伏が起こりうるなんて思ってもいなかったんだ!あははははは!』
長い間存在していた割に子供っぽいな。あたしは軽くそう感じたけど、一気に流れ込んできた情報にやられてそれどころじゃなかったの。
あたしはクラクラしながらこう答えたわ。
「ちょっと待って!あたしは一度死んだ所を蘇生して貰ったのね?それはありがたいけれど疑問が湧いたの。
この部屋は依然暑いままなのに、どうして今のあたしは平気でいられるの?」
『それは僕と一緒になったからさ。』
『簡単に言うとね、この部屋丸ごと僕が取り込んだのさ。無論、君の体もね。
僕はこれからこの体で宇宙の果てに行く。
でも君の肉体はこれからの旅には到底耐えられない。だから君の肉体の構成を組み替えたんだ。僕としては君の記憶だけ残っていれば問題ないけれども、君は体があった方が良いだろう?』
「え?ちょっと待ってよ!宇宙の果てとか言われても困るわ。それよりもあたしの体を組み替えたって、じゃあ今までのあたしはどこへいっちゃったのよ?」
『今までのあたしって言われても、君は君さ。ちゃんと君の意識は残してあるだろう?』
「そうじゃない!あたしはお母さんから貰ったあの体だからあたしなの!この体は似ているけど別物なのよ!返してよ!」
『聞き分けが悪いなあ。じゃあ訊くけど、お母さんから産まれた瞬間の体と、死ぬ前の君の体は同じだって言えるのかい?君ら生物は常に細胞の死滅と再生を繰り返して成長しているんじゃないか。
それは、もう別物なんじゃないのかい?』
あたしは少したじろいだけど、ここで負けちゃいけないと食い下がったわ!
「違うの!お母さんから受け継いだ大切なものが、あたしの血に!体に!流れていたのよ!あたしの魂がそう言っているの!」
『ああ、それは遺伝子って奴だよ。蛋白質で出来た肉体の設計図と言ったものかな。大丈夫、その情報を元により強く作り直しただけだからさ。』
『それよりも今君が言った魂ってものがよく分からないんだ。
それは、君の記憶の事だろう?』
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