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え?
あたしは返す言葉が無かった。そういえば魂って何なのだろう?
『君たち生物は脳から化学物質を分泌して、その反応で動いている様に見受けられる。それら反応の一部を知性とか、意識って呼んでいる。そうぼくは捉えた。』
『魂ってのは、知性が生み出した概念なんじゃないかな?』
『つまり、脳がなければ魂は生まれない。』
あたしに向かって話しているのか、それとも自分自身に問いかけているのか分からないけれど、もの凄い量の思考が流れてきたの。あたしはその中から辛うじて聞き取れる言葉を拾っていたけど、それがピタっと止まったの。そして、そう仮定した銀は、ぽつりと呟いたの。
『じゃあ、脳のない僕は魂がないの?』
あたしは戸惑った。銀のだした疑問に対する答えが見つからなかった事もあったけど、その声が酷く弱々しく、不安げに聞こえたから。
幼い子供のような無邪気さゆえの思慮のなさに憤慨もしたけれども、あたしは今の銀を守ってあげたいと感じたの。
「いいえ、あなたにも魂はあるわ。どこに、とは言えないけれども、あなたには魂はある。それはわかるの。」
『分からないなあ。クドリャフカ、どうして君は見えないものにそこまで確信を持てるんだい?』
「あはは、それを言ったらあなたおしまいよ?だってあなたは見えないけどここに確かにいるじゃない。」
あたしは銀にむかって微笑んだ。姿は見えないけれども、銀は大きく目を見開いてこう言ったの。
『ぼくはここにいる…?』
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