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2009年4月
春がやってきた。
会社の庭に綺麗な桜が咲いていた。
見ているだけで和むその景色は日頃の疲れを無料で治してくれていた。
「立花!早く取材行ってこい!」
「(言われなくてもわかってるっつーの。老人め)」
会社は雑誌編集社。最近のティーンズ流行を記事にしている『Rain』制作会社だ。30歳になる俺が仕事だからといって、レコーダー片手に女子高生へインタビューしていれば、当然、職務質問の対象者に早変わり。
先週から上司と一戦交え、目の仇にされている側としてはまだ、職務質問されてもいいか、と思っている。
昼間の取材は『真夏に備えろ!ミニ怪談話』の街角インタビューだった。
まだ夜になると肌寒い季節には早過ぎるひんやり感だった。
「立花さん。どれも似たようなのばっかですね」
一緒に回っていた後輩が愚痴のように言ってきた。
確かに、若い子達の怪談話はどれも似たような内容だった。
最近の子はこういうことに興味がないのだろうか。それとも、若い子の気を引くような出来事が少なすぎるのだろうか。
後輩も俺も企画のお蔵入りを覚悟していた。
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