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夕暮れの河川敷で二人乗りして自転車で帰ったときあたしは云った。
「なんかメールだとよく喋るよね」
「そんなことないよ」
「あたしのこと好き?」
「ああ」
「ほんとかな」
「ほんとだって」
素っ気ないそぶりをしておきながら家に帰ったあと《何かあった?》とメールをくれる彼が好きだった。あたしが辛いときや落ちこんでいるときには必ずメールをくれた。
でも彼とは卒業間際に別れてしまい、それっきり会っていない。
ボタンを押して昔のメールを見ようと思ったけど電池が切れて電源が入らなかった。
あのときの着信音は何だったっけ?
おかんがやってきて、
「昔の携帯、捨てるの?」
と訊く。
あたしは首を横に振る。
決して使うことのない携帯電話だけど捨てることなんてできない。結婚したら捨てるかもしれないけど今はまだ持っていようと思う。
だから、このままでいい。
ポケットのなかの携帯が鳴る。
あたしはどきどきしながらメールを開いた。
<了>
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