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──その猿は
前から三両目の棚の上にいるのです。
私はサラリーマンをやっているつまらない者でございます。
まどろみのなか朝をむかえ電車にのって会社に行き、高くもない給料のためにせっせと働き、会社と自宅を往復する日々を過ごしています。
低血圧の私は朝起きるのがとても億劫で会社に行きたくないと思うこともしばしばです。しかし、なんやかやいいつつ電車に乗っていることを考えると、習慣とはおそろしいものだとつくづく思うわけです。
いま私は電車のなかにいます。
車内には新聞を広げている人、文庫本をよむ人、音楽を聞く人居眠りする人、色んな方がいらっしゃいます。
月並みですが、私は中吊りを読むのを楽しみにしています。
なかにはおもしろいことが書いてあるので飽きることはありません。
中吊りを読んでも時間が潰れないときは、タイトルをそのまま暗記します。
三秒間じっと文字をながめるのです。次の三秒間は目を閉じます。
そしてあたまのなかに文字が浮かびあがってくるのを待つのです。
文字を思い出そうとしてはいけません。
自然と浮かびあがってくるのを待つのです。
うまくいくときもあるし、うまくいかないときもあります。
それでも待ち続けます。
静かに。
じっと。
私たちは何かを待たなければならないのです。
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