サバンナの王

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何かにつけて自分の息子は優し過ぎるのではないか一一、とライオンは気にかけていた。 ある日、子供ライオンが父親に尋ねた。 「お父さんのタテガミは何でふさふさなの?」 「坊主、いいことに気がついた。このタテガミはサバンナにおける絶対的強者を示す王冠なのだ。我々ライオンは常に百獣の王たらねばならぬ。ふはははっ」 「じゃあ、お父さんの牙はなんでそんなにとがってるのぉ?」 「捕まえた獲物にトドメを刺すためだ。ふははっ」 「じゃあ、その爪は?」 「これは獲物を逃がさないよう力ずくで抑えるためだ。なかには活きのいいインパラがいるからな」 「じゃあその脚はなんでそんなに太いの?」 「獲物を追いかけるためだ。サバンナを駆け回るためには強靭な足腰が必要なのだ、わかったか?」 「でも…」 子供ライオンはどんぐり眼で父親をみつめる。 「どうした坊主、云いたいことがあるなら云ってみろ」 「ううん、やっぱいい」 「気を使うな、云いたいことははっきり云えッ」 「あのさ」 子供ライオンは云った。 「牙とか爪とか脚とかって必要かなぁ」 父親はあたりを見渡すと悲しげな眼をした。それから、やれやれと首を横に振った。 子供ライオンがまじまじと見つめる。 「だって、ここ動物園だよ」 《了》
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