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「まったく、私が何したっていうのニーナ!」
スタジオに向かう車の中で、不機嫌極まりない様子を微塵も隠す事なく眉間に皺を寄せながら言うエミリアに、そばかすで眼鏡の女がペコペコと頭を下げる。
「すみませぇ~ん!つい忘れてしまってえぇ~」
(本当に反省してんのかしら……)
普段は敏腕だが、たまに抜けているエミリアのマネージャーである。
「さっきまで意気揚々と旅仕度してた私がバカみたいじゃない……」
「明日からは正真正銘のオフですから!ね?ね?」
ぐったりと肩を落とすエミリアだったが、ニーナは持ち前の明るさと笑顔でなんとか乗り切ろうとしているのが丸分かりだった。
こんな事は初めてじゃないので、エミリアはそれ以上何も言う気が起きない。
「まあまあエミリア。いつも怒ってばっかだとシワが増えるぞー」
エミリアが苛立ちを鎮めようとしてるという所を、笑いながら神経を逆なでするのは運転手のオリバーといった。
気のいい中年男性であるが、いつも一言多いのでエミリアにはよく怒鳴られていた。
そしてこの日も案の定。
「余計なお世話よッ!」
「いやいや気をつけろ~」
「うるさいッ!」
(この男は静かに運転する事ができないの!?)
もはやエミリアはため息しか出なかった。
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