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結局、その日は撮影以外にも何件か仕事を押し込められたおかげで、エミリアが帰宅したのは深夜だった。
(今日はよく眠れそうだわ…)
フラつくエミリアが高級マンションのエントランスの扉を開けようとすると、カードキーがない事に気づく。
「嘘でしょ…」
大理石の床に膝をついたエミリアの顔は蒼白だった。
(きっと現場の控室だわ。キーの入った新作のポーチをアネッサに見せてそのまま置き忘れてた……)
当然、こんな時間に管理人なんているはずもない。
(最悪だわ……)
こんな日に閉め出しを食らうエミリアはまさに不幸のどん底にいる境地だった。
今日の運気は最低に違いないと肩を落とすと、携帯電話を取り出した。
「あ!ニーナ!?お願いよ、今日泊めて……」
『すみませぇ~ん!今彼氏と一緒なんですうぅ』
電話の向こうから聞こえる申し訳なさそうな、しかし幸せそうなニーナの声に頭の中で何かが切れそうになりながらも、エミリアは電話を切った。
(仕方ない、今日は近くのホテルに泊まろう……)
ーーーエミリアはため息混じりに夜の街に出た。
この後、人生史上最悪な出来事に巻き込まれるとも知らずにーーー。
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